Deeper Japan、金沢エリアに体験商品を26件追加 能登上布を織り継ぐ最後の織元と訪日旅行者をつなぐ


石川・新潟で26商品を追加、全国で500件超の体験ラインナップに
訪日外国人向けの文化アクティビティを開発・提供する「Deeper Japan」。このサービスを運営するディーパートラベル株式会社(本社:東京都世田谷区/代表:石川光)は、既存の展開エリアである石川県と新潟県で、体験商品を新たに26件追加しました。これにより、同サービスの商品群は全国で26都道府県・500件を超えています。
Deeper Japanでは、石川県と新潟県の体験をまとめて「金沢エリア」として紹介しています。同エリアの商品群は65以上で、同社は今後さらに注力していくエリアと位置づけています。今回の26商品の追加は、文化の担い手と旅行者が出会う選択肢を広げる取り組みのひとつとされています。
同社は、次の工程を一貫して自社で手がけています。
- 地域の文化資源の発掘
- 職人との提携
- 体験商品の企画・磨き上げ
- 通訳ガイドの育成
- ビジュアル制作と発信
何百年と受け継がれてきた所作や、土地の風土に根ざした素材の選び方など、職人にとっては日々の当たり前である技の一つひとつに光を当てます。それを、海外からの旅行者が体感できる形に仕立てるという考え方です。体験は原則として少人数のゲストに絞って提供し、職人とゲストがより深く対話できる時間をつくっています。また、独自に採用し研修を重ねた通訳ガイドが同行し、可能な限りゲストの母国語で通訳を行います。

灰と青のあいだに ── 能登上布を織り継ぐ唯一の織元
金沢エリアの拡充にあわせて紹介されているのが、石川県羽咋(はくい)市にある能登上布の工房です。能登上布は、約2,000年前に崇神天皇の皇女がこの地で機織りを教えたことに始まると伝えられる麻織物で、原料は苧麻(ちょま)です。「蝉の羽」にたとえられる透け感と軽さを持ちながら、一生ものといわれるほど丈夫で、最上級の夏着物として愛されてきました。明治40年には皇太子への献上品となり、昭和35年には石川県の無形文化財に指定されています。
最盛期の昭和初期、能登には百を超える織元がありました。しかし暮らしの洋装化とともに数を減らし、昭和58年には5軒になり、翌年には組合が解散します。このとき組合でいちばん若かった3代目が、続けられるだけ続けようと決意しました。1891年に紺屋(染め屋)として創業したこの工房は、いま能登上布を織り継ぐ唯一の織元です。会社勤めをしていた3代目の息子が44歳で家業に戻り、現在は4代目として工房を率いています。
工房では、糸を巻き取る「糸繰り」から手織りの仕上げまで、細かなものを含めて100近い工程のほぼすべてを、分業に頼らず一貫して手作業で行っています。1,200本を超える経糸(たていと)を整え、櫛形の道具で糸に染料を刷り込む「櫛押し捺染(くしおしなっせん)」で、織る前に絣(かすり)の模様を染め分けます。この先染めの出来が、織り上がりを左右するといいます。
次の代を担うのは、4代目の姪である専務です。博物館勤務を経て、2016年ごろから本格的に工房の仕事に携わるようになりました。湿度が高く雨の多い能登の、灰色がかった風景を美しいと感じてきたといい、現在は着物の技を生かしたストールや小物に加え、能登上布で仕立てる日常着「凛装(りんそう)」も手がけています。2024年の能登半島地震では、自らも被災した織り手たちが発災から10日ほどで工房に集まり、工房はおよそ1か月でふたたび動き出しました。2026年に工房が掲げたテーマは「灰と青の間、能登のひかり」です。
海外からの旅行者を迎えることについて、専務は「一本の糸の細さも、手で染め、手で織る手間の重なりも、実際に目にしていただいてこそ伝わるものだと思います。そして能登を訪れて、能登上布に織り込まれた、灰色がかった能登の自然の風景を肌で感じていただけたら嬉しいです」と話しています。

金沢エリアに加わった主な体験
石川県
- 鷹狩り:金沢で鷹狩りの文化を伝える鷹匠のもとで歴史を学び、猛禽類と触れ合って訓練の様子を見学したあと、自らの腕に鷹を迎えます。
- 縁付金箔:全国の金箔の99%以上を生み出す金沢で、「縁付(えんつけ)」と呼ばれる昔ながらの製法を守る3代目の職人の仕事を間近に見守ります。
- 宗和流茶道:歴史ある建物で、季節の和菓子とともに濃茶と薄茶の二服をいただきます。
- 加賀獅子頭:白山市の工房で、父と子が手がける獅子頭の制作や修理の現場を見学し、手のひらサイズの獅子頭に自ら彩色して持ち帰ります。
- 曹洞宗の坐禅:金沢の市街を見下ろす、700年を超える歴史を持つ名刹です。住職の案内で伽藍(がらん)を巡って坐禅を組み、お茶をいただきながら禅の教えに耳を傾けます。
- 加賀繍:1912年創業の工房で、4代目と5代目の親子から加賀繍の歴史を学び、自分だけの作品を刺し上げます。
- 居合道:無双直伝英信流(むそうじきでんえいしんりゅう)を北陸に伝えた師範の孫弟子にあたる師のもとで、着物と袴に身を包み、いくつかの型に取り組みます。最後は師の演武を見守ります。
- 雁皮紙:江戸時代後期から一家で技を受け継ぐ工房です。9代目の女性職人の案内で紙漉きの現場を見学し、雁皮と楮(こうぞ)を合わせて自ら紙を漉きます。
- 金沢芸妓の座敷:一見客を迎えない茶屋のお座敷で、日本舞踊や三味線、太鼓などの芸を鑑賞します。お酒と軽食を楽しみながら、芸妓と言葉を交わすひとときもあります。
- 竹工芸:竹工芸の名匠として知られた祖父のもとで育った作家の工房で、作品を鑑賞したあと竹を編んで作品を仕上げます。
- 漢方:400年以上にわたり家伝の処方で薬をつくり続ける薬舗で、当主である薬剤師のもと漢方茶を味わい、体質に合わせた漢方の相談を受けます。
- 加賀象嵌:ギャラリーの見学と工房での技法の学びを経て、自分だけの象嵌のチャームを仕上げます。
- 草月流いけばな:草月流に入門して50年、その作品賞を二度受けた華道家の教室で、季節の花材を使って自分だけの一作をいけあげます。
- 桐工芸:100年以上続く桐工房の3代目の仕事を見学したあと、桐の器に焼き目を入れ、焼印を押して一品に仕上げます。
- 天神をひそかに守った寺での坐禅:700年近い歴史を持つ曹洞宗の寺で、寺の歩みを学び、住職とともに坐禅を組みます。
- 陶芸:かつて刀を納めた蔵を工房にした陶芸家のもとで器づくりに取り組み、仕上げの一点を選んで釉薬をかけます。
- 書道:2025年度に市の文化賞を受けた書家の教室で、書の成り立ちを学び、自分だけの一枚を書き上げます。
新潟県
- 燕鎚起銅器:1816年創業の工房で、湯沸や酒器ができる工程を見学したあと、自ら銅板を打って持ち帰れる一枚に仕上げます。
- 鮨職人と市場へ:古町に店を構える2代目の鮨職人の仕入れに同行して市場を歩きます。店に戻って握りの手ほどきを受け、自ら握った寿司と職人の一貫を味わいます。
- 曹洞宗の坐禅:新潟市郊外にある、かつての修行道場です。33代住職とともに、修行僧が坐った堂で坐禅を組み、境内を巡ります。
- 日本剃刀鍛冶:三条で、71歳で伝統工芸士の認定を受けた鍛冶職人の鍛冶場です。仕上げの工程を見学し、鍛造の一端に自らも取り組みます。
- 弥彦の酒蔵:弥彦山の伏流水で酒を醸す蔵を蔵元の案内で巡り、最後は蔵を代表する銘柄を飲み比べます。
- 書道:三代続く家族の書道教室で筆と墨の扱いの基本を学び、自ら選んだ漢字で作品を仕上げます。希望すれば、作品を掛け軸に仕立てることもできます。
- 三条のイカ凧:1847年創業の凧工房で、6代目の手ほどきを受けてイカ凧に色を入れ、持ち帰ります。
- 裏千家茶道:伝統的な空間で季節の和菓子とともに二服の抹茶を味わい、最後は自ら茶筅を振って一服を点てます。

訪日需要の拡大を背景に、国内外へ展開を広げる
日本政府観光局によると、2025年に日本を訪れた外国人旅行者は4,268万人に達しました。初めて4,000万人を突破し、過去最多を更新しています。2026年上半期も米国からの訪日客は毎月過去最高を更新し続けており、消費額は3,848億円で国・地域別の首位です。同社は、英国、フランス、オーストラリアなど欧米豪を中心に多くの市場で単月の過去最高が更新されていることを挙げ、文化体験を求める旅行者の増加が続いているとしています。
今後は既存エリアでさらに商品を開発するとともに、中部エリアや東北エリア、ヨーロッパおよび東アジアの国々でのサービス展開を予定しています。2021年に同社を設立した代表の石川氏は、職人の仕事場に旅行者を招いて直接言葉を交わす時間が、文化の違いを越えた相互理解と地域の伝統を次世代につなぐ力になると考えています。可能な限り自ら現場に足を運んでおり、2025年は年間200件以上の職人・事業者を訪問しました。










